1964年に祖父が開業した税理士事務所が、当法人の始まりです。その後、現CEOである父・天野隆が継承し、法人として拡大してきました。特に、相続税の申告に関する案件に強く、2019年末現在、累積相続案件実績17,000件近くと、業界トップレベルを誇っています。しかし決して順風満帆だったわけではなく、10年ほど前までは一般的な会計事務所と同じように、担当のお客様に対し、税理士がすべて何でも対応するスタイルでした。
このような中、2009年の大手町への事務所移転を契機に、トップダウンでダイナミックな会社組織の変革を実施。いわゆる“職人”の集まりから、組織による運営に切り替えたのは、業界的にも早いほうだったと思います。
さらに、2014年頃からは働き方改革にも取り組み始めました。私が当法人に加わったのもちょうどその頃です。驚いたのは、業務の進め方は非常に工夫されていましたが、あまりにもアナログだったこと。資料は紙ベースで、情報共有はお互い顔を突き合わせての打ち合わせが主流。私は最初のキャリアがSEだったこともあり、その業務形態のギャップは非常に大きいものでした。そこで、働き方改革の一環として業務のシステム化をリードすることになったのです。
課題は2つありました。まずは、法人内の情報共有です。当法人には、お客様と実務で関わる税理士のほかに、営業の部隊があります。この営業部隊は、お客様をご紹介くださる金融機関などとスムーズにリレーションをとる役割を担っています。紹介を受けるときは、営業担当に税理士が同行しますが、案件が進んでいくと税理士だけでお客様と接することもあります。そのため、お互いの動きをいちいち確認しないとわからない状況でした。営業担当が伺ったときに、「昨日、税理士さんとお会いして、お話したんですけど……」と先方に言われてしまうことも。結果的に、お客様にお手数をかけてしまうこともありました。
もう一つは、税理士の業務の効率化です。長く深くお客様と向き合う税理士は、どうしても一人ひとりの業務量が多くなります。そのような属人的な働き方を改めて見直し、効率化できる部分を洗い出して解消する必要がありました。
その一方で、営業部門からは「システムで名刺管理を一元化したい」という強い要望がありました。私は、営業部門だけでなく、税理士も含む法人内共通のデータベースになれば、営業担当と税理士の円滑なコミュニケーションや、多忙な税理士の業務負担軽減にも役立つのではないかと考えました。むしろ、活用しないのはもったいないと思いましたね。そこで、名刺管理ツールを導入することに。中でもSansanだったのは、実績があるのはもちろん、さまざまなサービスと連携を進めていて飛躍的な成長性を感じたことが理由です。
Sansanを導入してからは、「社内ニュース」の機能で、担当のお客様と社内の誰かが接触すると情報が飛んでくるので、営業担当、税理士ともに相手の動きがわかるようになりました。また、「企業ニュース」の機能で、ご担当者の人事異動や連絡先変更の情報がタイムリーにわかるので、お客様との関係づくりに活用しています。
社員同士も、Sansan基点によるコミュニケーションが増えています。何人かでお客様のもとに伺い、新しいご担当者と会うときには、法人内で誰か接点を持っていないかお互いにSansanを調べ、教え合うことも。それまでは、アポイントの前に訪問するメンバーと会議を開き、入念に情報共有していたことが、直前でもスマートフォンから簡単に調べられるようになりました。
また、人脈の引き継ぎという面でも、Sansanは活用されています。税理士は個人事務所を持ちたいという夢を持っている方が多く、独立する方も少なくありません。その人脈に「退職者」タグをつけて管理することで、重要な人脈を、継続してフォローできるようになりました。
このように、Sansanのおかげでお客様の情報をスムーズに共有できるようになり、今まで時間をかけても網羅できなかった人脈が、もれなく把握できるようになりました。私たちの人脈を大切にしたいという思いや理想が、Sansanによってようやく実現できたと感じます。法人の信頼性をSansanでより強固に担保できるようになりましたね。
Sansan導入の効果は、予想以上でした。というのも、相続というセンシティブな案件を扱っているため、税理士たちは信頼をつなぐ人脈をとても大事にしていました。そのため、それぞれが月に100~150枚ほどの名刺を、のべ3~4時間ほどかけてしっかり分類し、整理していたのです。これらの名刺管理時間が、ほぼゼロになりました。
また、何よりも信頼が大切な税理士法人にとって、Sansanはセキュリティー面でも貢献しています。紙の名刺運用が減少することで、名刺を外出時に持ち出さなくなり、打ち合わせなどで名刺のコピーや貸し借りがなくなりました。
このような個人に委ねられた名刺管理の作業は、組織の業務フローに現れない部分でした。だからこそ、みんな意識がなく、アナログな名刺管理が非効率とも思っていませんでした。Sansanの機能を使えば使うほど、「これは不要な業務だった」と気づかされます。このような意識の変化が、今後、法人そのものの文化まで変化させるかもしれません。
税理士は独立して起業する方がほとんどで、小規模な事務所が多い業界です。しかし、お客様とはとても深く関わっていくため、税務に関しても幅広い案件や、それ以外にもさまざまなご相談をよく受けます。そこで求められているのが、専門家同士のネットワークです。税理士にもそれぞれ得意分野があるので、紹介し合うことでよりお客様のニーズに応えられますし、ほかの士業の方ともつながれば、その可能性はさらに広がります。
当法人でも、「Mochi-ya」という、税理士から税理士へ仕事をつなぐプラットフォームを提供しています。これは、仕事を頼みたい税理士と仕事を引き受けたい税理士をマッチングするサービスです。目指すのは、お互いに評価し合える双方向型のサービス。その精度向上には、登録者のより深い情報が求められるので、Sansanのつながりも活用することで、さらによいサービスを提供できるのではないかと考えています。Sansanは拡張性が高いので、うまく連携していきたいですね。
実際、Sansanは他のサービスとの連携をどんどん進めていて、そのたびにどんな使い方ができるかと、ワクワクしています。たとえば、Salesforce®との連携強化もその一つ。Salesforceを営業活動で使用しているのですが、今後はSansanのコンタクトに登録した情報と連携して活用する方法を検討しています。そんなワクワクさせてくれるSansanの進化をこれからも期待しています。
誰もがいつかは考える時が来る「相続」という領域においてトップクラスの相談数を誇る税理士法人レガシィ様。お客様と息の長い関係性を構築していく裏側に、アナログからデジタルへと変革を起こし働き方を変化させる気概を感じました。変化にお応えし続けられるよう、Sansanも進化させていかねば、と改めて感じたストーリーでした。
カスタマーサクセス部 田中