
営業に異動してすぐのことでした。社長の立案で、新しいビジネスを考えるためのプロジェクトが発足。私も経営陣に声をかけられプロジェクトメンバーに誘われました。正直、営業に集中したかったので戸惑いがありましたが、「質より量の場当たり的な営業ではダメだ」「本当に困っているお客さまに適切なサービスを提案したい」という想いから、プロジェクトへの加入を決めました。
当時、会社に欠けているものを考えたときに、「デジタルの世界と接点をもつ」ということと、「営業の可視化」の2点であることがわかりました。そこで、MA(マーケティングオートメーション)を活用すれば、営業が適切なタイミングで、適切なお客さまにアプローチできるようになるのではないかという仮説にたどり着いたのです。
それからは本を読んだり、展示会に足を運んで片っぱしから話を聞いたりして、情報収集に奔走しました。そこで出会ったのがSansanです。いろいろな会社の話を聞いていて、皆さん「MAをやるならSansanの導入は必須」ということをおっしゃっていました。MAでメールマガジンを配信するための肝となるメールアドレスのデータ化精度も決め手となり、Sansanの導入に踏み切りました。
同時並行で、MAを推進するためのコンテンツづくりにも注力しました。具体的には、ホームページのリニューアルと同時に、ブログを新設することにより、メール配信する際のコンテンツを充実させました。
ツールの導入とWebのリニューアル。土台は整えたものの、まだまだ手探りという状態でプロジェクトが始動しました。
「営業は足で稼いでなんぼ」という文化が50年以上あった当社。「デジタルで接触して何になるんだ?」という厳しい意見もありました。そもそも理解すらできない人も少なくありませんでした。役員も、管理職も、現場も。そこでまずは全員の理解を得ることからはじめ、気付けば説明用の資料が60枚にもなっていました。
MAをはじめるために、メールアドレスを収集するべくSansanを導入しましたが、蓋を開けてみるとSansanの利用自体もなかなか定着しないのが現実でした。そこで、まずはMAの第一歩として、取り込みを定着させることに注力しました。実際の取り組みとして、名刺を取り込むことでポイントが貯まり、それが評価につながるというポイント制を導入。ただ取り込んだ枚数をポイントするのではなく、タグにより業種や役職を分類し、それによりポイントが加算されるようにしました。このポイント制度は、実はMAで顧客の重要度を振り分けるスコアリングにも役に立てています。
また、ホームページやメルマガからの問い合わせに対するレスポンスも強化しました。これまで問い合わせがあった場合には私が担当者にメールを送っていたのですが、問い合わせに慣れていないこともあり自分ごと感がなく、なかなか動いてくれなかったのです。そこで、Sansanの「メッセージ」機能を活用して、問い合わせ内容を、各拠点長を含めて共有。それにより、Sansanで過去の接点情報も合わせて確認できるので、一件の問合せに対して会社としてどう動いていくべきかを決めることができるようになりました。営業担当は外出先であってもスマートフォンアプリから内容を確認できるのでレスポンスも早くなりました。
当初はMAのためにという気持ちが強い中で導入したSansanでしたが、オンラインでの問合せに対して、オフラインでの接点を加味して戦略を立てられるというのは、大きな価値だと感じています。
MAが社内で理解されない当初、意識したのは「笑い」でした。カタカナ語は伝わらない、アニメーションを見せてもイマイチ理解されない。そこで、「MAがどんな未来をもたらすのか?」を感じてもらうことに主眼を置き、会議などではBGMをつけた動画をひたすら上映するようになりました。中身のことはわからなくてもいい。まずは感じてもらうこと。真面目に説明するのではなく、パフォーマーになってふざけてみようと。
世界観を感じてもらって、なんとなくでも「いいね」と思ってもらえるように終始しましたね。「誰も見てくれない」とふてくされてはそこで終わりだと思い、笑いを交じえて、そして本気で発信し続けました。
Sansanを導入して現在約3年になりますが、導入前と前期を比較すると問合せ件数は約15倍に増え、そこからの受注率は20%と高い数値になっています。問合せがきっかけで2,000万円の案件が創出されたこともありました。「何もしてないのに受注できちゃったよ」という営業担当の言葉はとても印象的でしたね。
SansanやMAを導入する際に、現実的に試算したつもりなのですが、前期は導入時の売上予測と比較して300%達成。かなり堅調に推移しています。地道に社内で伝え続けた世界感がようやく現実になり始め、社内の風向きも変わってきました。
今までみんなが漠然と理解していた世界観を、実感してもらえるようになったのです。
心が折れそうなことが何度もありました。正直会社を辞めたいと思ったこともあります。でも、ここで辞めたら、自分が営業をやっていたときに感じていたことを、今後入社する人も繰り返してしまう。まだ何も変えられていないということに気が付き、奮起しました。
そして、そのときふと立ち止まってみると、想いに共感してくれる仲間が増えていました。プロジェクトで最初に集まった5人もかけがえのない存在です。
今思えば、あのときプロジェクトに手を挙げていなかったらこんな苦労はしなくて済んだとは思います。でも、プロジェクトに参画していなかったら、多分今までどおりの営業をなんとなくしていて、そのうち嫌になっていたかもしれません。自分も、他のメンバーも。結果的に苦労はしたけど、やって良かった。今回のプロジェクトを通じて、企業文化が変わったと感じています。
今後は、私が社内でSansanの世界観を広めるためにパフォーマンスしたように、社外に対しても笑いを取り入れてトヨコンをアピールできればなと思います。
浦部さん自身、「数字を上げるから飛び込み営業はやめさせてくれ」と営業時代に直談判したことがあるとのことです。その頃から抱えていた想いが、今では企業文化を変えるまでに至ったことに感激しました。「うちの会社はMAなんてできないのでは?」そんな企業様にとって、MAとSansanをどう活用していくか、道標となる内容になっているかと思います。
カスタマーサクセス部 木村