
昭和36年10月21日の創業以来、当社はユニークな建材を提供してきました。代表的なものには、「Jotoキソパッキン」があります。木造住宅の基礎と土台を絶縁するJotoキソパッキンは、外の空気で床下を自然に換気できるため、湿気やシロアリから住宅を守ることができる画期的な資材です。
Jotoキソパッキン以外にも、扱う建材の品番は1,000点以上。お客様への提案や情報発信には、各商品の知識や建築に関する専門的な知識が必要になります。また、建材業界は商流がとても複雑です。住宅を建てる工務店やハウスメーカーへ商品が届くまでに、複数の流通業者や施工業者を経由します。加えて、商品ごとにその商流が変わることも。
このような背景もあって、お客様への提案や情報発信は、それらを総合的に理解している営業担当が一手に担ってきました。そのため、営業が会えていないお客様には、新商品のご案内が行き届かないこともしばしば。
営業からしてみれば、約70名で全国のお客様をカバーするために、各建材や流通経路について勉強を重ね、それぞれの要望に応じて提案をしなければならず、かなりの負担がかかっていたと思います。対して、私たちマーケティング部門は、展示会などの企画は行っていたものの、お客様と直接関わる機会が極端に少なく、営業から得られる情報だけが頼りでした。このような「営業だけが信頼関係の窓口」という状況を、このままではいけないと考えている人は、私だけではなかっただろうと思います。
そんな営業頼みの状況を打破するためには、営業の人数を増やすよりも、マーケティング部からメール配信を行い、情報を届けることが必要なのでは、と考えるようになりました。そのためにはまず、「全国のどこに、どのようなお客様がいるのか」を把握しなければなりません。
そこで、日報システムを調べてみたのですが、顧客データベースとしては不十分でした。というのも、各営業が日報を作成するために顧客情報を登録していたため、入力されていないデータも多かったのです。例えば、会社名や名字は書かれているものの、名前やメールアドレスまでは書かれていない、といったものが大半を占めていました。
また、顧客登録数が多い営業のデータから計算すると、本来であれば全体で年間約12,000件の新しい出会いがあるはずでした。しかし、そのうち年間5,000件以上の顧客情報は登録されていなかったのです。そこで、顧客情報を活用していくためには、「すでに会った顧客情報の補完」と「毎年約12,000件ある新しい顧客情報の追加」という2つの課題をクリアする必要がありました。
そのとき思いついたのが、営業が持っている名刺を提供してもらうことです。数多くのお客様と出会っている各営業は、多くの名刺を持っているはずだと考え、名刺管理システムを検討し始めました。
とはいえ、ただでさえ忙しい営業に名刺を登録してもらったり、システムを活用してもらったりすることは非常に難しいことです。まずは導入目的や目指す姿を、丁寧に説明することにしました。導入前には各部課⾧クラスに協力を仰ぎ、部門で集まる会議で、現状と、どんなことをやっていきたいかを伝えました。また、導入後も、各部門別に20~30回ほどの勉強会を実施。21拠点あるうちの、約95%の従業員が参加してくれました。説明会を丁寧に実施することで、営業以外の製造部などの社員からも「私にもアカウントを発行してほしい」と依頼されるようになりましたね。
結果として、全社200名以上の社員から名刺データを集め、1年目で約15万枚の名刺からなる顧客データベースを構築することに成功したのです。Sansan導入に携わったのは入社2年目のことだったのですが、勉強会を通して社内の人に顔と名前を覚えてもらうことができました。社内電話で「Sansanの件でお世話になった菱谷です」と言えば、すぐに思い出してもらえます。いわば「Sansan」が社内での名刺代わりとなってくれたのです。
データベースが整い、商品プロモーションのためのメール配信の準備ができました。まずは、小さくてもいいので「成功例」を積み重ねることを目指しましたね。メールマーケティングが営業活動に役立つことや、大きな問題が起こらないことを実証すべく、中規模の営業拠点に協力してもらい、3カ月ほどかけてβ版の運用を行いました。
その際、トラブルを避けるために「メールマガジンを送られると不快感を示しそうな人」は営業にタグ付けをしてもらい、配信リストから外しました。お客様はもちろんですが、営業がメールマーケティングに不安感を持たないことにも気を付けて進めました。
2019年度からスタートしたセミナーの集客に、メールマーケティングの効果が表れたことも、営業から協力を得られるポイントになったと思います。それまで、イベント集客はほぼ営業の腕にかかっていたので、メール配信によって営業活動の効率化につながったのです。
メールの効果は予想以上に好調で、配信したメールの開封率は34.3%を記録。その回のコンテンツのダウンロード数は234件と、こちらも高いパフォーマンスでした。営業担当が同じ件数に資料を配るには、1人で1日4件訪問したとすると、58.5日かかる計算になります。もちろん対面での説明とメールでの配信をまったく同じとは評価できませんが、コンテンツを広範囲に届けることについてはメールの効果は大きいと感じています。
高い開封率やダウンロード数を実現できたのは「お客様がいま困っていること」と「そのソリューション」をセットにして配信できたのが大きなポイントです。コンテンツ制作にはマーケティングや営業はもちろん、社内のさまざまな部署にも協力をもらいました。社外の有識者やお客様からアイデアをもらうこともあります。また、パフォーマンスを最大化できるよう、タイトルのABテストや配信日時の細かな調整も工夫しています。このあたりは社内のプロモーション担当によるところも大きいですね。
Sansanの導入により、マーケティング部からもお客様に情報発信ができるようになりました。これまで営業担当が一手に担っていたことを必要に応じて役割分担することで、効果効率を上げることができています。
名刺をデータ化するだけならもっと安いサービスはありましたが、社内およそ15万枚の名刺をできるだけ負担少なくデータ化し、200人以上のユーザーが日常的に利用を続けることでデータベースを更新できること、という観点からSansanを選んだのは正解でした。
今後は、より細かいタグ付けを行って、お客様の業界・業種や職種に合わせた情報をお届けできるようにしたいです。マーケティング部が信頼関係を強化することで、営業の活動がもっとスムーズになる。そのような良い循環を起こしていきたいです。
菱谷様は自分のミッションに真摯に向き合い推進をしてくださる非常に実直な方です。お一人でSansanの導入・推進を実施されていたので相当な苦労があったと思いますが、それをおくびにも出さずやり切る姿勢に頭が下がる思いです。菱谷様のその姿勢があったからこそユーザーの皆さまがついてきてくださったのだと思います。引き続き、人脈情報の共有・メールマーケティングに向けてSansanをご活用いただけますと幸いです。
カスタマーサクセス部 湊