Sansan×MAが導く
オフラインリード管理の未来とは?
大阪万博が開催された1970年、当時はまだフランスパンが珍しい時代。そのような中で設立間もない当社は、本場の味を日本でも提供できるよう、ドライイーストの輸入販売を始めました。以後、企業理念に掲げた「フランスの粋 エスプリを日本へ」のもと、製菓製パン業界のパイオニアとして市場をリード。長きにわたる信頼と実績を築きつつ、時代の流れに合わせた変化にも取り組んできました。国際化の発展とともに、扱う商材は製菓製パンの材料や機械からワイン、ワインセラーまで幅広くなっています。
私は2000年に入社し、商品管理部で2つの課のマネジャーを兼任しました。ここで情報管理、品質管理、コスト管理を含めた輸入実務に携わり、当社の輸入製品における品質の根幹を支えてきました。2018年4月には営業企画部へ異動。それまでが品質を担保する“守り”だとすると、以降はマーケティングという“攻め”のフィールドで、営業をサポートしています。
異動した頃はちょうど、社内的にもデジタル化によって業務改革を進めていこうという気運が高まりつつある時期でした。食品の業界は歴史が古く、職人気質な側面もあり、紙ベースのやりとりがまだまだ根強く残っています。当社の営業担当も非常にアナログな対応が多く、書類を清書するためにPCを使うという二度手間もしばしばありました。業務の効率化と生産性の向上のため、「アナログ文化の脱却」は急務の課題となっていました。そのため、デジタル化による業務改革は異動後すぐの大きなテーマとなりました。
はじめに取り組んだのは、展示会運用の改革でした。展示会は、お客様である卸売業者への情報提供や新規開拓のきっかけとなる、とても重要な場です。ただ、出展までは全社的に「文化祭」のように取り組むのですが、その後のフォローは各営業担当に一任されており、ブラックボックス化されていました。毎回、数百名の来場者と接点を持てているはずなのですが、展示会後の追客状況は社内で可視化されていませんでした。加えて、これまでに集めた名刺の多くが、見込み顧客として活用されることなく手付かずのままという状態。これでは宝の持ち腐れです。リードとして活用するという取り組みの必要性を強く感じました。そこで、展示会運用にマーケティングを取り入れることを検討。MAツールの導入が決まりました。
導入にあたり、さまざまなツールを検証しました。そのなかの一つがSansanとMAツールの活用でした。MAツールのセミナーで、成功の鍵は「配信までのリードタイムの短縮」にあると学び、そこにSansanのようにスムーズに名刺をデータ化するツールが役立つのではないかと思ったからです。
ただ、ツールを使うことがどれほど業務効率のアップにつながるかは懐疑的でした。そこで、実際に名刺データを手入力したらどれだけ手間がかかるか検証を行うことにしました。展示会で獲得した約900枚の名刺を営業企画部6~7名でデータ化し、手動で行った場合の工数を実測することにしたのです。やってみると、1日のうち5時間ほど割いて作業しても、データ化できるのはトータルでせいぜい100枚ほど。結局、すべての名刺のデータ化まで1週間かかってしまい、大変な作業だということが明らかになりました。「MA活用を成功させるためには、名刺管理ツールが必須になる」という予測は確信に変わりました。いろいろなツールの組み合わせを試しましたが、日常業務の傍ら、1時間で1,000枚の取込が可能だったSansanが効率的でベストマッチだと判断し、導入に踏み切りました。
Sansanの導入が軌道に乗り、更にMAと連携したことで、水~金3日間分の名刺はその日中にスキャンして、月曜中に配信することができるようになりました。また展示会のブースにスキャナーを持っていき、名刺をもらったら即時にデータ化をし始められる体制を整えたことで、展示会の翌日までにはお礼のメールを送れるようになりました。これらのメール配信は、MAツールによって営業企画部が一元管理しています。手軽さとスピードが大変好評です。
大きな定量効果も出ています。メールの開封率は驚異の40%。Webサイトへの流入率も10%に達しています。この成果のポイントは2つです。
一つは、やはりスピードにあるでしょう。展示会来場者は通常10社ほど回りますから、日があくとどうしても忘れられてしまいます。そのため、印象に残っている間に、真っ先にお礼をすることが大事になってくるのです。もう一つが、コンテンツの工夫です。こちら側の伝えたい宣伝部分は控え、読者が欲しがっている情報を読みやすい記事やイメージにして届けることで、開封率や流入率の向上を目指しています。
こうした取り組みにより、展示会後の営業の動きの「効率化・見える化」は大成功。展示会の位置づけが、出展して終わりの「文化祭」から、出展を始まりとした「マーケティング戦略の入り口」になりましたね。
今後の展望は、Sansanとのシナジーをさらに大きくすることです。現在、MAツールによるメール配信は営業企画部にレスポンスされるフローとなっており、それを担当営業に共有しています。その際に活用しているのがSansanの「メッセージ」機能です。名刺に紐づけて関係する社員全員に、タイムリーに情報を伝えられます。クローズドな環境のメールと違ってやりとりの履歴が残るので、全社的に情報共有しやすいところにメリットを感じています。
将来的には、日報管理もSansanの「コンタクト」に置き換えることを検討中です。これが実現すれば、リード獲得から営業活動までのフローをSansanで一元的に管理できることになるでしょう。すでに活用している社員もいるので、その成果が見込まれています。これができるのも、全社員がアカウントを持っているシステムだからこそ。今後もSansanを、社内情報共有のプラットフォームとして活用していきたいと考えています。
このほか、名刺管理やMAだけに限らず、スケジュール管理などもクラウド化するなど、どんどん変革を進めています。デジタルソリューションは、業務量を減らすためではなく、よりできることを増やすのが目的。まだまだ古い職人気質が残り、手仕事に重きを置くアナログな業界ですが、そのパイオニアとして、変えられるところはよりよく変えて、業界をリードし続けたいと考えています。
SansanとMAツールの連携によるマーケティング戦略についてお話くださった中田さん。職人気質の強い会社ながらも、クラウド化を進めるなど率先して業務改革に取り組まれ、高い効果を実現されました。アナログからデジタルへの変革について、「業務量を減らすためではなく、できることを増やすため」という考え方は、デジタル化を推進する読者の方にとっても、良いスパイスになるのではないでしょうか。
カスタマーサクセス部 安野